2025.7.31
2025.7.31
Kengo Kajita
2年ぶりのICA Congressはブラジルの首都、ブラジリアで開催された。
(ちなみに前回のICA Congressについては2023年のブログ記事「ドバイ編」をご参照ください)
ブラジルの都市といえば、
サンパウロやリオ・デ・ジャネイロを一番に思い浮かべる人が多いだろう。
日本人にとってブラジリアは、印象的な都市とは言い難い。
ブラジルの首都がブラジリアに移ったのは1960年。当時のブラジル政府により、内陸部開発の促進や統一国家の象徴として、計画的遷都が持ち上がった。
「50年の進歩を5年で」のスローガンを掲げた、21代目大統領ジュセリーノ・クビチェックの強烈なリーダーシップの元で、新しい首都が建設された。全ての政府に関わる建物は、国を代表する建築家のオスカー・ニーマイヤーに一任され、世界にも稀有な計画都市が誕生することなった。

ジュゼリーノ・クビチェック大統領記念館
オスカー・ニーマイヤーは師匠であるルシオ・コスタの都市計画に基づいて、町の中心部に、政府の重要な施設を凄まじい勢いで建てまくった。

まるで翼を広げた鳥のようでもあり、弓のようでもあるルシオ・コスタの都市計画マスタープラン
建築当時の価値観を反映して、車社会を前提に設計されたその都市の有り様は、まるで手塚治虫の漫画に出てくる未来都市のようだ。

ブラジリア大聖堂(カテドラル・メトロポリターナ)

ブラジリア国立美術館
偉大なる建築家ル・コルビジュエの思想に忠実に従い、モダニズム建築を独自の解釈と感性で実現したニーマイヤの圧巻の作品群。

国会議事堂 | ドーム型が上院議場 お皿型が下院議場
コンクリート作りの美しい建築の傑作の数々を、現代人の我々は、建築的な歴史の中で特異な場所に位置づけることができる。

ブラジル大統領府 プラナルト宮殿
「ブラジリア都市計画」が、ユネスコの世界文化遺産に登録されていることからもその意義は明らかだ。
けれど、その当時のブラジル国民はどう思ったのかな、と空想を巡らせた。
おそらく、そのかつてないプロジェクトにワクワクしつつも、市井の人々にとっては、相当に急な環境の変化を強いたのではないか。
当時、「人間不在の街」、「自動車中心の設計」とかなりの批判を受けたと聞く。
どんなものでも、それまで紡いできた線から外れて、突然、変異点が生まれると、違和感が生じる。
ブラジルの人々にとって、このブラジリア遷都は、ジャッジし難い、喉に刺さった小骨のようになっていたのではないかと感じた。
そんなことを考えながらICAコングレスに出席しているとあることに気がついた。
ICAのメンバー同士、これからの業界の進むべき方向について、答えのない議論を重ねている中にあって、誰の心にも、その前提となっているのは、「これまでの歴史を活かしつつ、いかに未来に想いを巡らせることができるか」ということだった。
象徴的なのは、今年のICA Congressのテーマが、まさに「Gems for Generations(次世代のための宝石)」だったということ。

ICA Congress Brazil 2025 "Gems for Generations"
建築もジュエリーも共通しているのは、ひとつの世代では決して完結しないということ。
短期的、投機的、時流への過剰なおもねりによって生まれたジュエリーは、資産価値どころか、未来への負債を増やしかねない。
「サスティナビリティ」や「エシカル」を声高に掲げるジュエリーブランドも多い。それはそもそもジュエリーの成り立ちの根幹にあるはず。だからこそ、「このやり方が正しい」と安易に規定すべきではないと、僕は思うし、もっと実直で継続的な活動の中にこそ、その思想は宿ると信じている。
ブラジリアに住む人々にとって、かつての統治者が描いた未来都市が、住み心地よく、誇れるものであればいいなと思う。
-KK